NO.103
2011年7月 『病原性大腸菌について』
    東成区医師会理事 岩本 伸一
 

「先生、最近O111って食中毒起こす菌があるらしいけどO157とかもあったけどどう違うんですか?」という質問を外来で受けました。今回のお話は病原性大腸菌についてです。
 大腸菌は、家畜や人の腸内にも存在します。ほとんどのものは無害ですが、このうちいくつかのものは、人に下痢などの消化器症状や合併症を起こすことがあり、病原大腸菌と呼ばれています。病原大腸菌の中には、毒素を産生し、出血を伴う腸炎や 溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こす腸管出血性大腸菌と呼ばれるものがあります。 腸管出血性大腸菌は、菌の成分によりさらにいくつかに分類されています。代表的な ものは腸管出血性大腸菌O157です。大腸菌は、菌の表面にあるO抗原(細胞壁由 来)とH抗原(べん毛由来)により細かく分類されています。「O157」とはO抗原 とし て157番目に発見されたものを持つという意味です(現在約180に分類されています)。
 近年、食中毒の原因となっているものは、O157が有名ですが、腸管出血性大腸菌にはこの他にO26、O111、O128およびO145などがあります。腸管出血性大腸菌は1982年アメリカオレゴン州とミシガン州でハンバーガーによる集団食中毒事件があり、患者の糞便からO157が原因菌として見つかったのが最初で、その後世界各地で見つかっています。
腸管出血性大腸菌の感染では、全く症状がないものから軽い腹痛や下痢のみで終 わるもの、さらには頻回の水様便、激しい腹痛、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし、時には死に至るものまで様々です。しかし、多くの場合は、おおよそ3~8日の潜伏期をおいて頻回の水様便で発病します。さらに激しい腹痛を伴い、まもなく著しい血便となることがありますが、これが出血性大腸炎です。発熱はあっても、多くは一過性です。
 これらの症状の有る者の6~7%の人が、下痢などの初発症状の数日から2週間 以内(多くは5~7日後)に溶血性尿毒症症侯群(HUS)や脳症などの重症合併症を発症するといわれています。激しい腹痛と血便がある場合には、特に注意が必要です。
 HUSとは溶血性尿毒症症侯群といい血栓性微小血管炎による急性腎不全であり、(1)貧血、(2)血小板減少、(3)腎機能障害を特徴とします。HUSの初期には、顔色不良、乏尿、浮腫、意識障害などの症状が見られ、子どもと高齢者に起こりやすいのでこの年齢層の人々には特に注意が必要です。
 腸管出血性大腸菌は75°Cで1分間以上の加熱で死滅します。なお、野菜の腸管出血性大腸菌を除菌するには、湯がき(100°Cの湯で5秒間程度)が有効であるとさ れています。

 
  家庭での主な注意点は以下の通りです。 (厚生省より)
1、 水洗トイレの取っ手やドアのノブなど、菌の汚染されやすい場所を逆性
石鹸や消毒用アルコールなどを使って消毒する。
2、 患者本人は、調理や食事の前及び用便後に流水(汲み置きでない水)で
十分に手を洗い、逆性石鹸や消毒用アルコールで消毒する。
3、 家族の者も食事前などは流水で十分に手を洗う。
4、 患者の便を処理する場合(おむつの交換など)にはゴム手袋や使い捨て
の手袋などを用いる。ゴム手袋を用いた場合には使用後に消毒する。また、おむつ交換による汚染の拡大を防止するため、決められた場所で行う。
5、 患者の便で汚れた下着は、薬品などの消毒(つけおき)をしてから、家族 のものとは別に洗濯する。また、煮沸をしても十分な消毒効果があります。
6、 患者はできるだけ浴槽につからず、シャワー又はかけ湯を使う。
7、 患者が風呂を使用する場合は他の家族と一緒にはいることは避け、乳幼児は患者の後に入浴しないように気を付ける。風呂の水は毎日替える。バスタオルは、ひとりで一枚を使用し、共用しない。
   
  皆様 充分にご注意ください。