NO.107
2011年11月
『乳癌治療の乳房温存手術とセンチネルリンパ節生検について』
    東成区医師会 今分 茂
 

マンモグラフィ、エコー、MRIなどの乳癌の診断技術の進歩や術中迅速病理組織検査の進歩により、乳癌の外科治療も大きく変化しました。患側乳房全体を腋窩リンパ節とともに大きく切除するという発想は完全に過去のものとなり、(1)乳房温存手術と(2)センチネルリンパ節生検が乳癌の標準的外科手術方法となりました。今回この2点について述べさせていただきます。

(1) 乳房温存手術

腫瘍径3㎝以下、術前マンモグラフィで広範囲な悪性の石灰化像を認めない、エコーやMRI検査で多発する乳癌病巣がないことなどを確認します。実際の手術では腫瘍の辺縁から2㎝離れた所で切除します。さらにその切除した組織の辺縁を術中迅速病理組織検査で癌細胞がないことを確認します。もし癌細胞があればさらに0.5㎝から1㎝追加切除して辺縁に癌細胞が残らないようにします。ですから術中迅速病理組織検査ができない病院では乳房温存手術はできません。この乳房温存手術は1980年頃より日本でも行われるようになり、2006年の時点で全乳癌の手術の60%に達しています。また最近では術前に抗癌剤の点滴を行い腫瘍を小さくし乳房温存手術の機会を増やすことも行われるようになってきています。

(2) 腋窩センチネルリンパ節生検

従来のように腋窩リンパ節をすべて切除すると術後の上肢のむくみが強く出現することがあり、それを防ぐために考えられた方法です。センチネルリンパ節とは癌がその領域のリンパ節の中で一番初めに転移するリンパ節の事です。術前に触診やエコー検査で腋窩リンパ節転移がない方が対象です。腋窩センチネルリンパ節生検査とは、手術前日または当日に乳癌の周囲または乳輪皮下に微量の放射性同位元素や色素を注入し、術中にガンマカウンターでその腋窩リンパ節を同定し摘出します。そのリンパ節を1㎜位の薄い切片とし術中迅速病理組織検査にて癌細胞が無いかどうか調べます。癌細胞が無ければそれ以上の腋窩リンパ節の切除は行いません。もし癌細胞が見つかれば従来のようにリンパ節を全て切除します。ですから術中迅速病理組織検査が出来ない病院ではセンチネルリンパ節生検はできません。

以上の(1)乳房温存手術と(2)センチネルリンパ節生検が大多数の乳癌の標準的な外科手術方法であり、それが不適切な場合のみ全乳房切除や腋窩リンパ節全切除が行われます。全乳房切除が行われた場合には、形成外科医とチームを組み乳房再建術を患者さ
んに勧めるようにと乳癌学会では勧告しています。早期の乳癌を発見するには月1回の自己検診と1‐2年に1回のマンモグラフィやエコーの検診が必要です。