NO.111
2012年3月 『トイレの神様』
    東成区医師会理事 浅井 晃
 
 トイレの神様に何をお祈りしていたのですか? と尋ねたくなる程長時間トイレに籠ったまま出てこない人がいます。消化器内科では、便通についての問診は必須なので、「あなたは排便にどのくらい時間がかかりますか?」とか「トイレに何分間くらい居ますか?」などと尋ねられます。排便に苦労している人が多い割りには、便の性状についてあまり問題意識を持って対処しておられないのも意外な現状です。
 難しい事は抜きにして、正常の排便について、( 医学部では生理学の講義で教わりますが )どこかで教えてもらわれた経験はありませんよね。今回はそんな話題です。
 正常な排便では、排出に何分もかかるものではありません。肛門を通過させるのに相当な力と時間を必要とする場合は、明らかに便が硬すぎるための異常です。早い人では小学生の頃から便秘傾向は始まり、女性に多く、恥ずかしいので相談をしないで、習慣性便秘へと移行してしまいます。食後の腹部膨満感・吐き気・腹痛などの症状で受診される事が多く、腹部の触診にて硬い腸内容物を触知するので診断は容易です。
 便秘はそのまま放置すると、結腸がどんどん拡張して本来の収縮力を失い、便が溜まったままで動かない状態、すなわち宿便が起こります。最悪の場合は、便塊による腸閉塞や腸穿孔などの緊急事態を招いて不幸な転帰をとることもあります。そこまで重症化しなくとも、腸内細菌によって発生する毒素は肝臓に負担となるので、肝硬変など肝機能が低下している人では肝性昏睡の誘因となります。
 繊維の多い食物や、水分摂取などで改善しない場合は、病気として対処する必要があります。漢方薬を含め下剤は多種多様にありますので、医療機関を受診して適切な薬物の処方を受けてください。もちろん健康保険の適応があります。恥ずかしがらないで早めに「かかりつけ医」に相談される事をお勧め致します。