NO.112
2012年4月 『RS ウイルス感染症』
    東成区医師会理事 増田 清和
 

 冬のかぜ症候群の代表と言えば、いうまでもなくインフルエンザですが、それに劣らないく ら い お 母 さ ん 方 に よ く 知 ら れ る よ う に な っ た 乳 児 の 気 道 感 染 症 の 原 因 と し て RS(respiratory syncytial)ウイルスがあります。R とは呼吸器、S とは合胞体(多核巨細胞)という意味です(同じウイルスの仲間に周知の麻疹やおたふくかぜがあります)。このウイルスに感染すると(潜伏期間は2~5日といわれています)気道の細胞が巨細胞を形成するため、気道を圧迫して細気管支炎や肺炎などの呼吸困難を伴う症状を引き起こします。初期症状は通常のかぜ(発熱・咳・鼻水)と変わらないのですが、上気道から下気道へ進行していくと次第に喘鳴や陥没呼吸を伴うようになり、6か月以下の乳児では入院が必要になるケースが少なくありません。
 RS ウイルス感染症は迅速検査キットが発売されてから診断は容易になりましたが、インフルエンザと違って残念ながらこれといった治療法が今のところないのが現状です。しかも、同じ仲間のウイルスである麻疹やおたふくかぜと異なり、感染しても免疫ができないので、何度も罹患します。とはいっても再感染するうちに症状は段々と軽くなっていきます。予防薬としてはシナジスという商品名で出ているパリビズマブ(RS ウイルスの表面蛋白を標的にする筋注の抗体製剤)がありますが、早産児(36週未満)・慢性肺疾患児・先天性心疾患児と適応が極めて限られています。
 RS ウイルスもインフルエンザと同じく飛沫・接触感染ですから、乳児に罹患させないためには手洗い・うがいが欠かせません。また、人ごみの中への外出を避け、家族がかぜをひけばマスクをすることをこころがけましょう。例年10月から4月にかけて流行し、冬季にピークを迎えますが、季節外の流行も見られますので要注意です。