NO.113
2012年5月 『ピロリ菌をご存知ですか?』
    東成区医師会理事 上原 泰夫
 

 日本における主要な死因は、1位;がん、2位;心疾患(心筋梗塞など)、3位;脳血管障害(脳梗塞、脳出血など)となっています。がんの中でも、胃がんは男性では肺がんに次ぎ2位、女性では1位となっています。
 胃がんの原因として、以前は胃酸分泌の低下や塩分摂取との関係が指摘されていましたが(蛇足ですが、胃潰瘍は胃癌の原因にはなりません)、最近では、1980年代に発見された、ヘリコバクタ・ピロリ(以下ピロリ菌)が胃がん発生に深く関係していることがわかってきました。ピロリ菌の感染率は発展途上国で高く、先進国で低い傾向にあります。特に上下水道の普及率の悪いところで高いとされています。日本でも、戦後の衛生状態が悪い時代に育った40歳以上の方の感染率(60-80%)は、40歳以下の方(約20%)より高率になっています。ピロリ菌は胃の粘膜に住みつき、粘液の下に潜り込んで胃酸から逃れています。
 ピロリ菌に感染しているかどうかを調べるには、内視鏡検査、血液検査、呼気検査などがありますが、最近は便での検査も可能になりました。この感染診断が保険適応される疾患は、1.内視鏡検査または造影検査において胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者、2.胃MALTリンパ腫の患者、3.特発性血小板減少性紫斑病の患者、4.早期胃がんに対する内視鏡治療後の患者、となっています。
 2種類の抗生物質と1種類の胃酸分泌抑制剤を7日間服用することで治療(除菌治療)は終了します。最近は、初回治療が成功せず、薬の組合せを変えた2回目の治療が必要になることもあります。副作用としては、下痢や腹部膨満感などで、重篤な副作用の頻度は高くありません。保険適応はありませんが、先に挙げた疾患以外に、萎縮性胃炎、胃過形成ポリープや逆流性食道炎にも除菌が勧められています。
 この除菌治療により、近い将来胃癌の発生が抑制されることが期待されています。