NO.117
2012年9月 『むせる』ということ―誤嚥性肺炎の予防―
    東成区医師会理事 林 正則
 
最近患者さんから、「おじいちゃんが食事中によくむせる」というような相談を受けました。人間は元来、鼻から空気を吸って気管に送り込み、口から食事をとって食道に送り込むという性質があります。食べた物が食道に送り込まれるときは、喉頭蓋というフタが気管の入り口をふさぎ、食物が気管に入り込むのを防ぎます。このフタの動きがうまくいかないと、食べ物や水が誤って気管に入り込む(これを誤嚥といいます)ことになります。このときに「むせる」のです。「むせ」は食物や水分が気管に入り込まないようにする体の防御反応です。人間は気管に異物が入り込むと咳によって排出しようとします。風邪をひいたときに咳をしたりするのもウイルスを排出しようとする反応ですし、通常の咳払いも気管にたまったゴミ(痰)を出そうとする生理現象です。ですから、気管に入りそうになったものを咳やむせで出そうとする間はいいのです。しかし加齢により飲み込みに関わる筋肉や反射も衰え、むせたり咳き込んだりして気管に入りそうになった食物を出したつもりでも、実は少しずつ気管に入り込んでしまう危険性があります。食物が気管に入り込むときに、口のなかにいるばい菌が気管に入ったり、いったん胃の中に入った食物が逆流して気管に誤って入ってしまったときは消化能力の強い胃液(胃酸)が気管に入り、それが肺炎を起こすと、誤嚥性肺炎という肺炎を発症します。誤嚥性肺炎は死亡する確率の高い恐ろしい病気です。高齢者では気管に入り込んだ唾液を出すこともできなくて誤嚥性肺炎を発症してしまう方もいらっしゃいます。誤嚥性肺炎の予防には、口の中を普段から清潔にしておくことが重要であるといわれています。歯磨きの時に舌を磨いたり、入れ歯をいつも清潔にしておくことも重要です。食事中にむせるようになったら、特に口腔内の清潔に気を付け、普段から唾液を飲み込む嚥下の練習をしておくこともよいでしょう。