NO.121
2013年2月 『食道癌ってどんなガン』
    東成区医師会理事 前田 一史
 
 一般に消化器癌は手術をしないとなおらないことが多いですが、その中でも食道癌は少し特殊です。
 胃癌などより質が悪く周囲へのリンパ移転が早く、自覚症状がない早期の段階でも粘膜下層(内側から粘膜、粘膜下層、筋層)より少し深くなると、食道という臓器が頚部・胸部・腹部にまたがる臓器のため大がかりな手術が必要になります。頚・胸・腹部の3領域では各々リンパ節処理や消化管再建(癌を切除した後の通り道を作ること)が必要で、肺や心臓、気管支に接近しているため手術操作は非常に難しく、人の体が耐えうる手術の中では最も侵襲(体への負担)の大きな手術といわれています。さらにその3領域のリンパ節郭清をきちんと行うと術後肺炎を起こしやすいという危険性はより高くなってしまいます。
 歌舞伎俳優の中村勘三郎さんが亡くなられた報道はまだ記憶に新しいと思いますが、手術がうまくいっても体への侵襲は大きく、その上術後化学療法は負担が大きく肺炎などの合併症を容易に起こしてしまう危険性が付きまといます。
 ただ最近では施設によっては開胸せずに胸腔鏡で手術可能になり手術時間も短縮でき体への負担はかなり軽減でき、合併症も減っています。歌手の桑田佳祐さんは食道癌で術後も復帰されていますがちょっとした治療の選択で大きく運命が変わるのでしょうか。
 食道癌は年間1万5千人ほど発症し男性に多いのが特徴ですが、この癌は生活習慣で予防できる代表的な癌の一つです。
 咽頭癌は96%、肺癌は72%、食道癌は48%が喫煙と因果関係ありというデータもでています。また飲酒や熱い食べ物も入口から近い臓器なので直接影響を受けやすいため食道癌のリスク因子と言われています。できるだけ予防し胃内視鏡だけで診断は可能ですから、特に飲酒・喫煙の多い方はリスク因子が高いのですすんで相談してみましょう。