NO.125
2013年7月 『先進医療』
    東成区医師会副会長 長田 栄一
 
 食道がんを患った作詞家で直木賞作家のなかにし礼さんが、手術を受けずにがんを克服したとテレビで話されていました。先進医療の放射線治療の一種である『陽子線治療』を受けてがんが消滅したとのことです。最近、生命保険の宣伝で『先進医療』と言う言葉はよく耳にしており、医療保険が使えないためかなり高額であることなどは、皆さんも知識としてはお持ちであると思います。
 なかにしさんの食道がんは、「初期から進行した状態」で手術適応でしたが、心疾患を抱えていることから“切らずに治すがん治療”を望まれました。複数の病院を訪ねましたが、手術しか道はないと相手にされなかったため、わらをもすがる思いで、何か他の治療法はないかと調べていく中『陽子線治療』を見つけ、受けることを決意されました。
 では陽子線治療とはいったいどんなものなのでしょうか。「通常のX腺の放射線は、身体を通り抜ける性質を持つが、陽子線は決められた場所にピタリと止まることができるため、がんをくり抜くように治療ができる。つまり、1カ所に固まっているがんには有効であるが、広い範囲や全身にがんが散らばっているような状態では、陽子線治療の有効性は発揮できない」と専門医。
 要するに固まったがんであれば、ある程度にまで大きくなったがんも治療が可能。陽子線治療対象疾患は、肝がん、前立腺がん、肺がん、食道がん、脳腫瘍など多様。ただし、胃がんは不規則な動きをするため対象外。1カ所に留まっているがんが対象。『痛くもかゆくもない治療』と言われ、仕事をしながら治療をされている患者もいるとのことで、これまでの副作用に苦しめられるがん治療のイメージを大きく覆す、正に最新医療であります。
  陽子線治療は先進医療と認められていますが、保険適用ではありません。陽子線の技術料は自己負担で約300万円。生命保険「先進医療特約」で補えるものもあります。ただし、現状として全国で7施設しか導入されていません。
 関西周辺では兵庫県立粒子線医療センター、福井県立病院陽子線がん治療センター。当然すべての人が回復に繋がるものではありませんが、なかにしさんの回復で、励まされ希望を抱く人は、多くいるのではないでしょうか。