NO.126
2013年8月 『治療可能な認知症』
    東成区医師会理事 別所 啓伸
 

 認知症の高齢者が 300 万人を超えたことが 2012 年 8 月の厚生労働省の推計で 明らかとなりました。2002 年時点での患者数 149 万人と比較すると 10 年間で 2 倍以上となり、2002 年のデータに基づく前回推計(2010 年に 208 万人、2025 年 に 323 万人)を大幅に上回っています。

 認知症の人の増加は非常に重大な問題と認識されていて、世界中で様々な研 究がなされています。しかしながら、認知症の主要な原因(以下の 3 つの病気で、認知症の原因の 8 割以上を占めています)であるアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症に関しては、根本的に治療する薬はまだありません。だからといって何もしないのではなく、早期に診断を受け治療を開始することにより、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。

 そして、もう一つ重要なことは、案外知られていませんが認知症患者の一割弱に「治療可能な認知症」と呼ばれる一群の疾患があり、これらは早期に発見し治療することにより認知症の治癒も見込まれるのです。具体的には甲状腺機能低下症、薬物性認知症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症などがこれにあたります。

 甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの分泌量が不足し、身体の活動力が低下します。それに伴い精神的な活動にも影響が及び、認知機能障害があらわれてくるのです。治療としては、薬によって甲状腺ホルモンが補充されます。薬物性認知症に関しては、原因となる薬剤の減量、中止により症状が改善します。慢性硬膜下血種は、頭部打撲後、脳を包む硬膜と脳の間に血種が形成されている状態で、早期発見できれば簡単な脳外科手術で治療できます。特発性正常圧水頭症とは、脳脊髄液の流れや吸収が阻害されることで、脳脊髄液が脳室にたまり、脳室が拡大して脳が圧迫される病気です。早期に診断でき一定の条件がそろえば脳脊髄液を排出する経路を作るシャント手術が行われます。

 以上「治療可能な認知症」に関してお話ししましたが、いくら治療可能と言っても、発見が遅れれば症状が改善しない事もあります。ですから、『ちょっと最近忘れっぽいなあ』と、ご自身もしくはご家族が感じたら、できるだけ早くかかりつけの医師にご相談下さい。