NO.130
2013年12月『高齢者の看取りについて』
    東成区医師会理事 上原 泰夫
 
国家財政は医療費の増大により破綻する危険があるとする、“医療費亡国論”のもと(私は信用していませんが)、社会保障費を如何にして抑制するべきか、盛 んに議論がされております。ある経済界のシンクタンクでは、高齢者の医療費を抑制するには、
1. 薬の処方数を減らす(飲み忘れている薬剤の費用は年間500億円?)
2. 延命措置の代表例“胃瘻”についての問題(1年間にかかる医療費と介護費
の合計は500万円?)
3. 日本では病院での死亡の割合(約80%)が高すぎる(イギリスで58%、オランダで34%)
4. “人間の最期のあり方”をめぐる議論が必要
 と、言っています。医療界でも、高齢者に胃瘻の処置をすることや人工透析をすることへの新た
な指針を作ろうとする動きがあります。
 また、ある老年学会誌の論文で、
1. 経口摂取が困難な人は、経口摂取ができる人より
2. 誤嚥のある人はない人より
3. 経管栄養(胃瘻など)や中心静脈栄養を受けている人は普通食を食べている人より早く亡くなる傾向にある。
 というようなデータも発表されています。
 私も、ある特別養護老人ホームで、高齢者の看取りをすることがあるのですが、同じような印象を持っております。ご自分で食事がとれず、身体の諸機能が衰えた方に無理に水分や栄養を与えても、うまく吸収ができないようです。また、水分を与えすぎると、尿や痰の量が増えたり、むくんだりして、かえって苦しそうにされる方もおられます。水分を控えたほうが苦しまず、安らかに旅立たれるような気がしています。このような時期には、医療的な処置よりも、残された大切な時間をご家族と過ごされることが最も大切なことなのでしょう。
 日本では、今後20年間、多死社会を迎えます。これからは“死”について学習し、ご自身の死の迎え方(リビングウイル)をどのようにしたいかを考えることも必要でしょう。