NO.136
2014年6月『健康の基準が変わる?』
    東成区医師会理事 福井 栄一
 

 今年 4 月以降の報道で「コレステロール・中性脂肪・血圧等がもう少し高くても大丈夫」というニュースをお聞きになったことがある方も多いと思います。今回の発表は「日本人間ドック学会と健保連(皆さんの健康保険証を管轄している組合等の連合会です)による 150 万人のメガスタディー(大規模試験と訳されます)」とういものがソースとなっています。注意すべきは下記にあると思います。

1 「判断値」と「基準値」の違い
「判断値」とはこれまで健診などで使用されてきたものです。今回変わると言われているのは「基準値」です。両者は異なるものですが、一般的には基準範囲=正常値・判断値と考えられがちですが、これらは言葉の定義が全く違うのです。単純に何が違うかというと
「判断値」→数〜数十年にわたって得られた、脳卒中等を起こすリスクが少ない値
「基準値」→ある年(一年)に人間ドックを受けた健康であるとされた人の検査値

2 「判断値」と「基準値」はどちらを用いるべきか
上記からわかるように、今回の「基準値」では、その時点で健康でも今後どうなるかの概念が抜けているのです。つまり今回の「収縮期血圧 147mmHg まで正常」との判断は、その時点で「健康」でも数年後はどうかはわからないことになります。一方「判断値」の基準でよく用いられる日本での「久山町研究」では収縮期血圧「120mmHg 未満」の人に比べ「140〜159mmHg」の人で 1.9 倍、「160mmHg 以上」の人で 2.8 倍、約 20 年間の間に脳卒中が多くなることが示されています。

3 今回の「基準値」はあくまで中間報告であること
あくまで現時点ではどちらを医療に用いるか、つまりはどちらを信じるかは明白かと考えます。新しい「基準値」に批判的な文章になりましたが、一方的に批判しているわけでありません。「基準値」・「判断値」は時代・環境によって変動する可能性は大いにあります。今回の「基準値」は「人間ドック学会」からもあくまでも「中間報告」であると発表されています。また「今回のいわゆる健康人のデータを 5~10 年かけて追跡調査を行い、基準範囲の妥当性を検討する必要がある」とも発信しており、その結果を見てから判断する必要があるでしょう。