NO.143
2015年1月『水ぎわ作戦』
    東成区医師会理事 川口 義廣
 
 今、西アフリカでエボラ出血熱が猛威を振るっており、スペイン、アメリカでも2次感染者が出ています。このような危険な感染症が国内に入らないよう水ぎわで食い止めるために、成田空港や関西交際空港には検疫所が作られています。しかし、水ぎわ作戦と言うのは、なかなか困難なものなのです。
 私は2003年、その当時中国で SARS(サーズ、重症急性呼吸器症候群)と言う未知の感染症が流行した時、関西国際空港の検疫所に医務官として数回お手伝いに行ったことがあります。サーズと言う(咳で感染を起こすらしい)死亡率の高い感染症を日本国内に入れない、水ぎわ作戦強化のためです。サーズの流行している北京、香港、東南アジアから航空機が入ると、検疫ブースには入国者の長い列が出来ます。熱がないか?(サーモグラフィーでのチェック)、医療関係者でないか?、サーズの患者さんと触れる機会はなかったか?、日本国内での連絡先は?、等々を中国語の通訳を介して聞いてゆくのです。それだけしても、サーズウイルスは国内に入りました。
 エボラやサーズ等の感染症の検疫で最も困難なのが、ウイルス感染はしているが発症していない方のチェックです。いわゆる潜伏期の患者さんのチェックですね。船旅なら時間がかかるので、船のなかで発病します。航空機は速いので、潜伏期間中に空港、検疫所を通り抜けて行けるのです。これをすべて水ぎわで食い止めるのは至難の業です。不可能と言っても良いでしょう。アメリカでは、西アフリカから来た人には、潜伏期間最大の21日間の隔離を強制的に行う州も有るとか聞きます。
 さて、私たちは常にいろんな感染症の危険に取り囲まれて生きている、と言っても過言ではありません。ワクチンで予防できる感染症には、是非ワクチン接種を受けてください。これも大切な、『個人の水ぎわ作戦』なのです。