NO.144
2015年2月『治癒する認知症 慢性硬膜下血腫』
   

東成区医師会理事 谷口 博克

 
脳は頭蓋内において、外から硬膜、くも膜、軟膜という 3 枚の髄膜に包まれ存在している。硬膜は厚いが、くも膜と軟膜は薄く脳表と一体となっており、硬膜と脳表との間の空間を硬膜下腔といい、そこに血液が貯留することを硬膜下血種と呼ぶ。慢性硬膜下血種は軽微な外傷が契機で、その後緩徐に血腫が増大し神経症状の悪化を認めるが、外科的治療によりほぼ良好な経過をたどることが多い。男性に多く、脳萎縮のある 60 歳以上の高齢者が半数以上を占めるが、若年者でも見られる。飲酒癖のある人にも多い。血腫は通常は一側性 であるが、両側性の場合もある。診断は CT や MRI で脳表に接する三日月状の血腫を確認し、脳室の偏位や脳溝の消失をみる。受傷して 3 週間から 3 ヶ月で発症し、症状は血腫に よる頭蓋内圧亢進、脳の圧迫によるもので、頭痛、活動性の低下、記憶障害、手足の麻痺などさまざまであるが、若年者は頭痛が多く、高齢者は精神症状が著名で認知症と間違われることもある。治療は少量の場合は経過観察し自然治癒を期待することもあるが、血腫量が多い場合や、症候性の場合は血腫穿孔洗浄術を行う。手術は局所麻酔で行われることがほとんどで 30 分程度で終了する。手術直後から症状の改善が見られることがほとんどである。圧迫されていた脳は、1 ヶ月から 2 ヶ月以内で十分に膨隆し、画像上正常構造に回復するが、脳の弾性がない高齢者では、硬膜下腔に血腫が再貯留し再発することもある。その場合は再手術を行うか、全身麻酔下に開頭で被膜ごと摘出する場合もある。