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2004年3月 みんなの診察室より『胃・食道逆流症(GERD)』
    東成区医師会理事  萩原 辰男
 
  皆さんは「胸やけ」をおこした事はありますか? フライや天ぷらなどの脂っこいもの、あんこやチョコレートなどの甘いものを食べた後、しばらくして、みぞおちから胸にかけて熱いような感じとムカムカする感じが起こる。まるで胸の中が焼けているよう。そう、それが「胸やけ」です。では、この症状はなぜ起きるのでしょうか? 

上部消化管は上から口、食道、胃、十二指腸とつながっています。胃の中には胃酸が存在しますが、胃には粘液を出して自身を守る胃酸に対する防御機能があります。ところが食道には胃酸の攻撃に耐えうる防御がありません。胃酸が胃の中から食道内に逆流すると食道粘膜が胃酸によって傷害されます。これによって起きる症状のうち、最も多いものが胸やけなのです。食道と胃との境目を下部食道括約部(LES)と云いますが、このLESが食道の出口を締める圧力(LES圧)によって胃酸の逆流を制しています。正常な人でも食後、胃酸が食道内に逆流することが知られています。しかし、逆流量が多かったり、長時間に及ぶと食道の粘膜傷害が起こってきます。この疾患を「胃・食道逆流症(GERD)」と称します。「逆流性食道炎」もほぼ同じ疾患として扱われています。

胃・食道逆流症は食事の内容によって起こり易くなります。脂肪分の多い食品、甘い食品はLES圧を低下させてしまいます。前述の胸やけが起こる訳はこれでお解かりでしょう。この他にもアルコール類、香辛料、トマト、みかん、オレンジなどいくつかの食品によるLES圧低下があります。

姿勢によっても胃・食道逆流症は悪化します。前屈みの姿勢は胃酸の逆流を起こします。では食後すぐに横になったらどうでしょうか? 胃を横倒しにするため極めて胃液は逆流を起こし易いでしょう。牛にはならないでしょうが、病気にはなり易い状態と考えられます。就寝前に何かを食べるのは止めておいたほうが良さそうです。

高齢者に「食道裂孔ヘルニア」という食道と胃の境界が上方にずれてしまう変形がしばしばみられますが、こうなるとLES圧はより強く低下するため胃・食道逆流症はますます起こり易くなっています。

胃・食道逆流症は最近になって増えてきていると思われます。食生活が変化し脂質の摂取が増えたこと、ライフスタイルの変化、高齢者の増加、診断技術の進歩などが関係しているのでしょう。

治療は主に薬物治療です。プロトンポンプ阻害薬(PPI)が広く使用されるようになって、治療成績は大変良くなりました。稀に内服治療が効かない症例には外科的治療も行ないます。

胃・食道逆流症の症状は胸やけの他にも前胸部痛、長く続く咳、喉のイガイガ感、声枯れなど心臓疾患、呼吸器疾患、耳鼻科的疾患と鑑別が必要なものがあります。

思い当たる点の有る方は最寄りの医療機関の受診をお勧めいたします。