NO.158
2016年4月 『慢性硬膜下血腫について』
    東成区医師会 理事 別所 啓伸
 
“食事をしていたら、突然お茶碗を落としてしまい何となく力が入りにくいんです”といった訴えで患者様が来院された場合、通常脳梗塞等の脳卒中を念頭に置いて検査を進めてゆきます。その際、まずは頭部単純 CT(脳の断面を見ることのできる検査)を行うのですが、検査結果を見ると、脳卒中ではなくて脳を包んでいる硬膜(こうまく)と脳の表面にあるくも膜の間に、“袋に包まれた血液”が存在し、これが正常の脳組織を圧排し、症状が発現していることが時々あります。この“袋に包まれた血液”のことを慢性硬膜下血腫といいます。
 慢性硬膜下血腫はゆっくりと、普通 3 週間以上を経て硬膜下に血液が貯留してきた状態と定義されます。発症時の症状は、頭痛、手足の脱力、言語障害、認知機能の低下等様々です。血腫の発生に関しては現在でも不明な点が多いのですが、最も有力なのは外傷由来とする説です。本症の原因となる外傷は,転 倒など軽微なものが多いとされ,頭部打撲を忘れてしまっているケースも少なくありません。
 本疾患は 60 歳以上で急激に発生頻度が増加します。また同じ 60 歳以上でも以前の報告に比べて最近の報告では明らかに発生頻度が増えています。これは、狭心症や脳梗塞などの予防を目的に広く普及した抗凝固薬や抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)の影響が大きいのではないかと考えられます。
治療方法としては、局所麻酔下に頭蓋骨に小さな孔をあけ、血腫の被膜を切開した後、シリコン製のチューブを血腫腔に挿入し生理食塩水で洗浄するだけでよいのです。これにより、多くの場合後遺症なく治癒する可能性が高いのです。
 慢性硬膜下血腫に特有の症状はありませんが、頭部 CT(もしくは MRI)で簡単に診断可能ですので、頭痛をはじめとした気になる症状があれば、まずにかかりつけ医にご相談ください。