NO.176
2017年11月 『治る認知症』
    東成区医師会会員 小川大二
 

高齢化社会に伴い認知症患者に対する介護が社会問題となっています。厚生労慟省の発表によると日本の認知症患者数は2012年時点で約462万人、2025年には700万人前後に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人を占める見込みです。
 認知症には複数の種類があり、なかでも有名なのがアルツハイマー型認知症で、ほかに血管性認知症、レビー小体型認知症などがあります。アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症に対しては現在4種類の認知症治療薬が認可されています。しかしあくまで認知症の進行を遅らせるための薬で、以前は認知症になってしまえば治ることはないと考えられてきました。しかし近年になり「手術により治せる認知症」がわかり、積極的に手術が行われるようになってきました。「特発性正常圧水頭症」と言われ、脳脊髄液が過剰に貯留し、「歩行障害」「認知症」「尿失禁」を来してくる病気です。脳脊髄液は脳内のある組織から作られ、脳内部および周囲を循環し、脳表近くのある組織から吸収されます。通常は生成された同じ量が吸収され循環する脳脊髄液は一定量が保たれますが、なんらかの原因で徐々に貯留傾向になり発症してきます。貯留してくる原因がクモ膜 ゛下出血や髄膜炎などはっきりしているものもありますが、原因不明なものが特発性正常圧水頭症です。症状および圓像検査(CTやMRI)により疑われた場合、タップテストという検査を行います。脳脊髄液は名前のごとく脊髄周囲も循環しているため、腰椎から針をさして抜くことができます。約30m1ほど脳脊髄液を抜き、歩行障害や認知症の改善がみられれば強く特発性正常圧水頭症が疑われ手術を行います。脳脊髄液が過剰に貯留されるのを防ぐため、体内にチューブを埋め込み、新たに排出される経路を作製するシャント手術と言われるものを行います。通常はチューブが、直接頭蓋内かあるいは腰椎から腹腔内へ皮下組織を通過し留置されます。手術は全身麻酔で行いますが、比較的体への負担は少なく短時間で行えることができ、高齢者でも行えるものです。特発性正常圧水頭症患者は約30万人いると言われ、認知症の割合からすると少ないですが無視できるものではありません。
 症状が当てはまるようであれば脳外科外来を受診していただき、少しでも介護負担の軽減に役立てればと考えています。