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2003年2月 みんなの診察室より「脱水症について」
    東成区医師会 理事 飯盛 幸雄
 
 我々の身体の水分は体重の約60%と言われていますので、体重60kgの人ではおよそ36リットルの水分を保持していることになります。水分は食事や飲料水を通して口から入りますと、胃や腸で吸収され血液内に入り、最後は毛細血管で細胞内外に分布します。
 水は細胞内外で自由に往来できますので、食物から得た炭水化物、脂質、タンパク質等が代謝される過程で適時使われて、潤滑油のような役目をしています。それ故、水は常に異なる物質に変換されることなく、最後まで、水そのままの形で使われます。すなわち水分は溶媒としての働きをしているのです。水分が不十分であれば、あらゆる身体の代謝の回転が旨くいきません。それ故、水こそが細胞内外の代謝を操る影の主人公であり、生命維持の基本物質であると推察されます。
 ここで水分の摂取が全く無いとすればどうなるでしょうか。先ず我々の身体は常に呼吸、発汗などによって、体液の水分が無自覚的に失われていますが、その水分の消失によって、体液の浸透圧が上昇して来ます。この上昇は脳の口渇中枢を刺激し、我々は喉に渇きを覚えます。そこで水分を取りたいという衝動が起こり、お茶などの水分を取ります。
 一方、浸透圧が上昇しますと、脳にある抗利尿ホルモンの分泌が起こり、これが腎臓に作用して、尿の排泄を減らす方向に作用します。この飲水行動と尿量低下によって、体内の水分の摂取が排出を上回り、体液が増加して来ます。増加によって、浸透圧が通常域に戻りますと、体内の水分量は正常に復します。このように、浸透圧をいつも正常範囲に保つことによって水バランス機構が維持され、日常の生命活動が営まれているのです。
 ところが、意識障害があるため、口渇が訴えられない老人、あるいは喋れないか或いは意識があっても身体を動かせない、しかも誰も介助してくれない状態のご老人は飲水行動が取れないため、体液の濃縮が生じて脱水症が起きやすいのです。そのため、このようなご老人には常に慢性の水分不足に陥っていないかどうか常に注意を払う必要があります。すなわち室内が高温になって汗をかきやすい状態になっていないか、風邪などで高熱のため発汗の増加がないか、或いは呼吸器感染症に罹患した時、水分を充分にとっているか等に注意を払って、必要と思えば、充分なお茶・ポカリスエットなどを与えて水分不足に陥らないように気を付ける必要があります。