NO.20
2004年8月 『診断用X線と発癌』
    東成区医師会理事  川上 朗
 
日本ではCTやレントゲン検査などの診断用X線によって、癌が3.2%増える可能性があるという内容の英国の論文が今年1月に発表され、4月には新聞やテレビで報道されました。論文の内容は、「X線診断は大きな有益をもたらし、その診断による被ばく量は通常少なく、発癌の危険性はきわめて小さいが、放射線で誘発されて発生する癌の発生率が、日本においては、他の先進国(0.6%〜1.8%)と比べて突出して高く推定された」というものです。

 この論文の根拠は、公表されているX線診断の頻度と被ばく量から、発癌の危険性を推定したものですが、通常のX線検査で少量の被ばくによる発癌の可能性や発癌率の推定法には定説がなく、あくまでも推定なのです。

 しかし、この論文が指摘した重要な点は、日本のX線検査数が世界でも飛び抜けて多く、特にCTの設置台数は、他の先進国平均の3.7倍(人口当たりの比較)も多いことです。また日本では、その設置台数が多いだけでなく、皆保険制度のため医療機関を容易に受診できることで、検査数が増加しているのも事実です。

CT検査により有益を受ける人々の数も多いと考えられますが、被ばくを考えると不必要な検査の増加は避けねばなりません。特に被ばくの影響が出やすい小児や若年者においては細心の注意が必要です。

医師や医療従事者は、放射線が発癌の危険性を増す可能性があることを正しく認識して、できるだけ被ばくを少なくするように努力する必要があります。また患者さんは必要なX線検査までやめるのではなく、医師とその検査の必要性についてよく相談した上で、必要なX線検査を受けることが大切です。