NO.25
2005年1月 『点滴神話』
    東成区医師会理事  飯盛 幸雄

 いわゆる点滴とは注射による輸液治療のことですが、昨今はこの輸液治療などの医療事故が後を絶たず、マスコミなどに大々的に報道されています。輸液治療というのは直接血管の中に輸液を注入する治療法であるため、効果がてきめんであるという反面、万が一、間違った輸液内容や輸液量・速度で行った場合は、患者さんの状態が急変し、最悪の場合には医療事故を招いてしまうことになりかねません。それ故、医療サイドでは余り行いたいものではありません。

しかし、テレビ・映画場面では、輸液バッグがぶら下げられている光景がしばしば映し出され、その影響のためか、輸液治療の効果は絶大だと信じている人が多く、一寸疲れた場合とか、風邪のような場合でも、安易に点滴をして下さいと要望する患者さんが案外おられます。しかしながら、外来での点滴からでは、身体に投与されるカロリーは余りにも少なく、口から水と飲食物を一緒に少しでも取った方が、輸液を受けるよりはるかに安全で多くのカロリーと水分を生理的に摂取することが出来ます。  

それでは本来の輸液治療が行われる適応はどのような場合でしょうか。輸液の目的は大きく、1)体液の管理、2)栄養補給、3)血管確保に分類できます。体液の管理とは下痢・嘔吐・熱中症・その他で身体の体液が失われたり(脱水症)、同時に体液中の電解質成分であるNa、K、Clなどが過度に失われたり、時によっては体液バランスの乱れから、体液が酸性又はアルカリ性に傾いたような病態の場合に、それらのアンバランスの是正を目的に輸液治療を行うものです。このような体液の管理以外に栄養目的の輸液治療もあります。癌などで、経口摂取が不可能の時、胸壁から鎖骨下静脈などの太い血管にチューブを挿入して行う長期持続輸液治療のことです。更に血管確保とは、抗生剤、抗癌剤等の希釈液の輸液をする場合、或いはショックなどの場合に血管確保を目的に行う輸液治療のことです。

故に何の目的もなく、ただ漠然と一寸疲れた場合とか、風邪でしんどいとかで、外来点滴を受けるのは治療上何の意味もありません。何の目的で点滴を受けるのかを主治医に聞いて、安易に点滴を要望する姿勢は正していく必要があります。