NO.40
2006年4月 『気    胸』
    東成区医師会理事  長谷川 宗 吉


 気胸とは、肋膜炎の時に水が溜る空間を形成する胸腔に、空気が貯溜した病態を言います。これには自然気胸と人為的気胸があります。

 前者は若年、痩せ型で、ヘビースモーカーの長身男性に好発します。気腫性肺嚢胞や癌や、まれに子宮内膜症などで発症するものであります。通常は、突然の胸痛や咳や呼吸困難で発症しますが、数分で治まる事が多いのですが、徐々に症状が悪化して緊急に入院を必要とすることがあります。

 後者は、事故による胸部打撲や肋骨骨折、刃物による刺傷、そして治療目的での鍼(はり)や高カロリー輸液の為の穿刺によっても発症します。

 どちらの場合でも、軽いものは空気の漏孔部が小さい為に、自然に閉鎖して保存的に治癒することが多いのですが、呼吸困難がますます強くなってくれば、胸腔穿刺ドレナージ(吸引処置)を必要とします。それでも改善しない時は内視鏡的(最近は殆どがこの方法)にて、また漏孔部が大きくてチアノーゼを伴う緊張性気胸を呈する時は、肋間切開にて観血的肺切除術又は肺縫合術を必要とします。

 気腫性肺嚢胞には、肺表面を包む臓側胸膜内にシャボン玉様に膨隆した「ブレブ」と、酸素交換を行う肺胞壁の破壊による肺内の異常気腔である「ブラ」があります。たまたま胸部レントゲン検査や胸部CT検査にて偶然に発見されますが、自覚症状に乏しい場合には経過観察されています。

 タバコの喫煙が咳を誘発する際に、急激で異常な内圧がかかりブレブやブラが破れて気胸を発症します。その為に患者さんには、医師より絶対に禁煙を守るように指導されるべきであります。

 最近この気胸が私の従業員の家族に発生しました。10年前に肺嚢胞を指摘しておりました51歳の男性ですが、1日40本の喫煙を続けておりました。その間なんの異常もみられませんでした。出張で九州にて仕事の最中に突然の胸痛と咳がありましたが、気にもとめずに動いておりました。ところが徐々に呼吸困難が強くなって来ましたので、数日後宿泊先の近くの病院を受診致しました。レントゲン検査の結果左肺に気胸をおこしており、心臓を圧迫して危険の為、緊急手術をするように強く勧められました。しかし見知らぬ病院での治療は受けたくないと奥さんに携帯電話がかかりました。約3時間の新幹線のなかで、動くと苦しい為に殆ど身動きもせずに帰阪致しました。息子が自動車で待機して、すぐさま天王寺のK病院に緊急入院させてもらいました。担当医より、もう少し遅かったら心停止したかもと言われ命拾い致しました。検査の結果大きな肺嚢胞が破れており、内視鏡手術をせずに観血的開胸手術を受け、九死に一生を得て生還致しました。現在元気に働いています。一生禁煙です。誘惑に負けないように頑張って欲しいものです。