NO.45
2006年9月 『メタボリックシンドローム』
    東成区医師会副会長   飯 盛  幸 雄


“ 日本を含めて世界の健康政策は運動不足や栄養過剰対策に注がれています。それは世界の死亡統計では約3割が、動脈硬化がもとで生じる心筋梗塞などの心血管病で占められているからです。米国はいち早くコレステロール値が高いのが大きな要因であるとして、コレステロール低下策を勧めました。所が、その米国でも、今や日本でもコレステロール値とは関係なしに、心血管病の発症者が増えていることが明らかになりました。そこで、肥満、糖尿病、高中性脂肪血症、高血圧といったありふれた生活習慣病が実は共通の病態基盤を有しているのではないかという考え方が起こり、世界で諸種の説が提唱されました。日本では、阪大の松澤前教授が腸の周囲にある内臓脂肪の蓄積が生活習慣病を引き起こす成因であるとの説を唱え、内臓脂肪症候群と名付けました。今日では、諸種の説はいずれも同じような概念であるとして、メタボリックシンドロームという名称で統一されています。メタボリックシンドロームは、糖尿病に肥満が多いことや、脳卒中の発症と高血圧の相関が極めて高いこと、心筋梗塞に高脂血症が大きく関与していることから分かりますように、この病態の形成に生活習慣の関与が強いと考えられています。ここで大事な点は、わざわざメタボリックシンドロームという名前が必要であるのは、「まだ高血圧、高中性脂肪血症、糖尿病といった生活習慣病と診断するほどでない、末病の段階、発症寸前の状況である」といった段階でも同一人に上記の因子が集積することにより、動脈硬化を形成しやすいことが特徴であります。これまで危険因子が軽度であれば、なにも治療せずに経過観察だけですますことが大半でした。今回、日本のメタボリックシンドロームの診断基準が作成され、病態への認識が高まりました。診断基準の特徴は内臓脂肪蓄積を全面に出し、それと相関するウエスト周囲径を診断の根本に入れたことです。男性のウエスト径85cm、女性90cm以上の肥満を大前提にして、それ以外に高トリグリセライド血症≧150mg/dl、又は低HDL血症<40mg/dl、最大血圧値≧130mmHgかつ又は最小血圧≧85,空腹時血糖≧110mg/dlのなかで、2項目以上があれば、メタボリックシンドロームと診断されます。皆様のなかに糖尿病、高脂血症、高血圧として、医院を受診される方の一部に、男性のウエスト径85cm、女性90cm以上の肥満の方は、メタボリックシンドロームの病態にあると考え、積極的にウエスト減少を目指した健康指導とリスクの総合的な管理或いは一疾患と捉えた治療を受ける必要があります。勿論、既知の高コレステロール血症、食後高血糖があればきちんと治療・管理を受けるのはいうまでもありません。