NO.46
2006年10月 『脳は鍛えられるか?』
    東成区医師会理事   住本 公日乙


私が初めて認知症とおぼしき人と接したのは小学校低学年の頃でした。近所の売店に漫画雑誌を2冊買おうと10円玉を13枚握りしめて行きました。1冊が60円で、もう1冊が70円でした。「これとこれを下さい!」と言って130円を出しましたが、そこのお婆さんは140円だと言って聞かないのです。おかしい??いくら勘定しても130円のはずだが相手は大人だし、もしかして自分が間違っているのかもしれないと思い、もう10円取りに帰ったのでした。後で母にそのことを話したら、お婆さんの方が間違っていたとわかり悔しい思いをしたものです。今となっては認知症のためだったとわかりますが。

 脳血管性やアルツハイマーによる認知症はある程度仕方ないとして、なるべくなら呆けずに老後を暮らしたいものです。患者さんで80歳以上の方ですが非常にしっかりした人が何人かおられます。聞くと会社の経理を任されているとのこと。計算に強い人は呆けにくいようです。某ゲーム機の「脳を鍛える・・・」というソフトでも単純計算を重視しております。

 さて、脳は左右に分かれているのはご存じだと思いますが、左脳は物事をゆっくり少量ずつ処理していくのに対し右脳は高速で大量に自動処理できる能力があるといわれております。私のような右利きでは左脳しか使っていない人も多いのかもしれません。確かに瞬時に多くのことを覚えるのは苦手です。右脳開発で有名な某チャイルドアカデミーの授業風景をテレビで見たことがあるのですが驚異的でした。先生が数十枚の絵カードを素早く次々に見せてゆき、子供たちが何の絵だったかを順番通りに言い当てるのです。私にはあまりに速すぎてついていけませんでした。脳は鍛えたらそこまで記憶力が伸びるのか!とショックでした。

しかしどうやったら右脳を鍛えられるのか?と疑問に思っていたら別のテレビ番組で面白い実験をやっていました。20名ほど並べて制限時間内にその人の名前を何人覚えられるか、というものです。ゲストの俳優と一般人十数人がチャレンジするのですがほとんどの人が2〜3名くらいしか当てられません。そこで、右脳を鍛えるために1週間ほど全く右手を使わず、左手で日常生活をこなす訓練が行われました。最初のうちは食事も思うように食べられず苛々するばかりでしたが最後の方には結構器用に箸を使えるようになっていました。さあ、そしてもう一度名前当てに挑戦です。何と、ほとんどの人が最低でも10名前後は当てられるようになっていました!短期間でこれだけの効果が出るとは驚きでした。

私も早速訓練しようと思いましたが仕事中は無理ですので、とりあえずパソコンのマウスを左手で使うようにしました。当初はポイントするのもままならなかったですが今ではドラッグ&ドロップも普通にできるようになりました。すると、字も何とか書けるようになりました。箸はもう一歩と言うところでしょうか。これで右手を怪我しても何とかなるかな? ところで、肝心の記憶力は?・・・まだ努力が足りないようです・・・・。