NO.47
2006年11月 『油(あぶら)と脂(あぶら)』
    東成区医師会理事   長田 栄一



『あぶらっこい食事や脂肪分の多い食事を控えてください。』

よく病院や診療所で言われることだと思います。“あぶら”が、如何にも

悪者になっていますが、“あぶら”もなければ絶対に生命維持はできません。

何でも極端に考えると危険です。

ビールが骨粗鬆症に良いと報道されればビールを飲み、赤ワインが身体に

良いと言われれば売れ行きが伸びるといったことは、余りにも短絡的です。 

さて、“あぶら”とは何でしょうか?

動物の組織や植物の種子の中に含まれる脂肪(脂肪酸のグリセリンエステルからなる物質)の総称です。常温で液体のものを『油』、固体のものを『脂』と言います。

 動物性の脂肪は悪く、植物性の脂肪は良いとよく耳にしますが、栄養学的には、脂肪酸の種類で分類し、取り過ぎてはいけないもの、しっかり取ることが薦められるものに分けています。




飽和脂肪酸(牛肉や卵、ご飯等に含む)は、これまで健康に悪いとされていましたが、そうではなく、これらは代謝されてオレイン酸に変わり、体内でコレステロールをためにくくする作用もあるのです。また、良いとされていた不飽和脂肪酸の一種であるリノール酸(植物油、マヨネーズ、豚肉等に含む)は、

その代謝産物であるアラキドン酸が、動脈硬化や高血圧症の原因となるとの

報告もあります。

 もう一つの不飽和脂肪酸(α-リノレン酸、EPA, DHA)は、中性脂肪を

下げ、悪玉コレステロールを滅ぼします。まさに、“あぶらは、あぶらで制す”とでも言える作用があります。この脂肪酸は、海藻類、貝類、特に青身魚(中でもイワシ)に多く含まれます。

 このように書くと、青身魚ばかりを食べて、今回悪者になったリノール酸を含む食品を避けてしまいそうですが、そういった行動はしないで下さい。やはりリノール酸もなければ、人は生きられません。また、飽和脂肪酸は、特にカロリーが多いので、これも取り過ぎてはいけません。すなわち、野菜、豆類、魚を中心とするものの、いろいろなものをバランス良く食べることが大切なのです。

つまり、昔ながらの日本食が美食と言えます。