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2003年5月 みんなの診察室より『肥満に弱い日本人』
    東成区医師会理事  飯盛 幸雄
 
  若い女性は必要以上にやせたがる傾向がありますが、中高年の男性は、肥満に対して無頓着であります。無頓着のまま過ごし、糖尿病、高脂血症、高血圧、脂肪肝といった病気が併存している場合、肥満が「肥満症」と診断されて、対策・加療が必要になります。なぜならば、肥満は、上記のような生活習慣病を招くだけでなく、これらが原因となって動脈硬化をもたらし、心筋梗塞や脳梗塞といった命とりになるような病気の発症につながりかねません。すなわち、肥満症は、単なる肥満と違って、はっきりした病気であり、見逃すことができません。肥満は、脂肪細胞の集まりです。脂肪細胞は、食事から得た過剰エネルギーを中性脂肪(トリグリセリド)という物質の形で細胞内に備蓄し、空腹時や運動時には、これを分解して、エネルギーを作り出します。人類をはじめ、多くの動物が、今日まで生き延びて来られたのも、この脂肪細胞のおかげだと言われています。しかし、最近になって、脂肪細胞は、この役目以外にサイトカインとかホルモンといった生理活性物質を放出し、各種の臓器に作用していることが分かりました。この生理活性物質は、通常、適切に放出されますが、肥満になると、全身の脂肪組織、特に腹腔内の内臓脂肪細胞から過剰に放出され、生活習慣病の発症の一因になるのです。それ故、皮下脂肪型の肥満の人より、お腹の大きい内臓脂肪型の肥満の人が、臨床上、問題になるわけです。肥満あるいは痩せかどうかを計るのに、「BMI」(Body・Mass・Index)といわれる世界的に普及している指標があります。これは、体重(s)÷身長(u)で簡単に求めることができます。日本肥満学会では、この数字の22適正な体重としてとらえ、25以上を肥満、18.5未満の人を痩せという基準を設けています。身長が160pの人では、体重64sでBMIが25となる数字です。BMIが25以上で、ウエスト計測(へそ周り径)で、男性では85p以上、女性では90cm以上の人は、内臓型脂肪が多く蓄積されている可能性が高いといわれています。日本人はBMIが25以上になると、生活習慣病の発症が多くなります。欧米人は、BMIが30以上にならないと、発症が多くなりません。それだけ、日本人は、肥満になるまでに、生活習慣病が多発するのではないかと推定されています。それ故、日本人の遺伝的な体質を理解して、「恰幅がよい」「貫禄がある」といったほめ言葉は、中高年者にとっては、想定外の異常事態であることを認識する必要があります。