NO.64
2008年4月 『「メタボリック・シンドローム」には
食事療法に勝るものはない』
    東成区医師会副会長  飯盛 幸雄


 最近、メタボリック・シンドロームは「メタボ」と簡略に言われ、すっかり有名になりましたが、診察室で「食べ過ぎからくる栄養過剰や運動不足は心筋梗塞などの病気になる率が高いですよ」と説明してもなかなかピンときてくれません。それは5〜6年前に中国で発生し世界中を震えさせたSARSや狂牛病のように目の前に敵がいるわけでなく、また“痛い”とか“熱がある”とかの症状がないためと思われます。

「メタボ」は病気ではありませんが「メタボ」は過食で余剰のエネルギーが内臓に中性脂肪として蓄積され過ぎて健康が脅かされる状態ともいえます。何年か前まではお腹の大きい人は栄養良好と評価されていましたが、今では内蔵肥満は動脈硬化を起こし心筋梗塞などを発症させる大きな危険因子の一つと見なされています。現実に、高コレステロール血症を下げる薬剤をいくら服用しても、まだ60〜70%の人は心筋梗塞などが発症している事実があるからです。要因として高コレステロール血症以外に喫煙、年齢、性別、遺伝子背景、高血圧、高中性脂肪血症、糖尿病などの危険因子の重なりが指摘されています(多危険因子症候群)。なかでも臨床的に高血糖、高中性脂肪血症、高血圧、肥満を伴う例は、ある一連の共通した病態から生じているとされ、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)という名称で国際的にも一般化されています。共通した病態とは内臓脂肪蓄積あるいはインスリン抵抗性が基礎にあるという考えであり、この背景には過食、運動不足などという生活習慣の乱れが大きく作用しています。特にお腹の大きい「リンゴ型」の肥満の人は内臓脂肪組織から種々の「アディポサイトカイン」という数多くのホルモン様蛋白が異常に分泌され、その結果インスリンの作用が効かなくなり(インスリン抵抗性)心臓血管病が発症しやすくなります。

「メタボ」の診断基準値は病気とまでは至らない下限値が用いられています。検査値が病気までに至っていないから大丈夫と自己判断するのは間違いで、それらがいくつか重なると高コレステロール血症と同じ程度に心筋梗塞などが発症するからです。治療として「メタボ」の個々の検査値を改善する薬物治療を行っても効果は余りあがりません。根本的な治療は内臓脂肪蓄積の軽減を目指すことがもっとも効果的でかつ重要で、食事療法を行い、体重が減少に向かえばこれに勝る治療法はありません。