NO.73
2009年1月 『『脳出血妊婦たらい回し事件』について』
    東成区医師会理事 宮本 肇


  三十年程前、私が産婦人科医として勤務していた時から産婦人科の救急を受け入れてくれる病院はほとんど無かった。他科は妊婦というだけで引いてしまう。産婦人科をやっていて胎児が死亡する。胎児が変になることに対するトラブルが多いからである。妊婦が異常事態になった時母体を助けるか、胎児を助けるか、医者側の選択は母体側を助けることを優先するが、患者及び患者家族がその時点で即胎児をあきらめるかどうかが問題である。妊婦が異常事態になった時胎児がどうなろうと医者に一切文句を言わないといった環境が必要である。妊婦が脳動脈瘤の破裂でクモ膜下出血を起こしている疑いがある時先述した様な環境にあれば、産婦人科医は大病院の脳外科に連絡を取る。クモ膜下出血なら緊急手術が必要な為二〜三の大病院に連絡すれば受け入れてもらえる。ついでに三十何週の妊婦ですがそちらの方で分娩(帝王切開)もお願いしますと言えばよい。

事実三十年前私が産婦人科の勤務医であった時妊娠中毒症で入院されていた患者が夜(私が当直医であった)意識消失を何回か起こし、クモ膜下出血の疑いがあった為、脊髄穿刺を行い(当時CTは一般的ではなく、私の勤務病院にはなかった。)血性髄液を引いた。大病院の脳外科に連絡したら血性髄液なら当院へ送れとの事であった。ついでに患者は三十何週の妊婦ですが、そちらで分娩までよろしくお願いしますと依頼した経験があります。

この様に妊婦が異常事態になった時、胎児がどうなっても患者や患者家族が医者とトラブルを起こさないといった環境が大切なのです。さもなければいかに医者不足で医者を増やそうと産婦人科医不足は解消されない上にこの状態が十年続けば、今度は新しい産婦人科医を指導する産婦人科医もなくなってしまう産婦人科完全崩壊の事態となってしまう。