NO.91
2010年7月 『慢性甲状腺炎(橋本病)について』
    東成区医師会副会長 萩原 辰男
 
 甲状腺は頸の前、喉仏の下にある小さな臓器です。甲状腺ホルモンを分泌しており、このホルモンは代謝のスピード調節を行い、たいへん重要です。甲状腺は自己免疫疾患をおこしやすく、なかでも慢性甲状腺炎(橋本病)は以前から患者数が多いことが知られていました。慢性甲状腺の患者さんの一部の方はやがて甲状腺機能低下症に陥ります。甲状腺機能低下症の症状としては、無気力、疲れやすい、眼の周りがむくむ、寒がりになる、体重が増える、脱毛、声がかすれる、など色々とありますが、どれもがゆっくりと進むため、本人はもとより家族の人でさえ気がつかないことが多くみられます。また、血中コレステロール値が上昇してくるので、コレステロール値が高い患者さんは一度は甲状腺機能をチェックしたほうが良いと思います。診断の決め手は甲状腺機能の低下と免疫異常によって出現する抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体と呼ばれる自己抗体が陽性になることです。甲状腺のサイズは大小まちまちであり、必ずしも甲状腺が腫れるとは限りません。圧倒的に女性に多い疾患で、以前は成人女性の約5%にみられると言われていましたが、最近の調査により甲状腺自己抗体が出現している成人が男性で7人に1人、女性ではなんと4人に1人もいることが分かりました。皆さんの周りも、そして皆さん自身にもこの疾患の患者さんがいっぱい存在することになります。ただし、ほとんどの人は体質を持っているだけで治療の必要が無く一生を過ごします。一握りの方だけがやがて甲状腺ホルモンが欠乏し治療が必要になります。またその治療も薬を内服するだけですので、そんなに心配しなくても大丈夫です。要は低下症に気づくことです。何となくやる気がしない、ずっと疲れた感じが続く、顔がむくんで治らない、などありふれた症状ですが気になる方は甲状腺の検査をお勧めいたします。