『こどもの弱視や近視について』(令和7年2月-3月号)

東成区医師会理事 寺口正之

 大阪市でも最近になって3歳児健診でスポットビジョンスクリーナー(SVS)が導入され、こどもの目の検査が充実してきました。SVSは屈折検査を目の写真を撮ることで解析でき、斜視、乱視や不同視など弱視となる可能性を指摘できます。2017年頃に米国から日本に入ってきたので、まだまだ新しい機器です。以前クリニックでデモの機会があり実際にしてみました。本当かな?というくらい簡単で結果もすぐにわかるので、集団健診でやるべきだと業者の方に言ってクリニックでは購入しませんでした。2年ほど前に東成区の保健センターにお目見えしたのでびっくりしました。全員に施行され約10%程度は異常となり眼科の先生に精密検査を依頼いたします。結果を拝見しますと、治療を開始したとの返事も多く有用な検査であることは間違いないです。ただ、SVSでも見逃す可能性があり、3歳健診以降も小児科や眼科でSVSのある施設でチェックしてもらうのがいいかと思います。弱視は、3歳で発見されれば比較的早期であり、視機能の改善が見込まれます。
 また、近視も最近多くなってきているようです。以前聴講した、慶応大学眼科教授(現在名誉教授)の坪田一男先生のご講演では、近視を改善させるには1日2時間の外遊びがよい、と言われていました。小児科外来では、こどもにそのことを指導しています。塾などで遊ぶ時間がなく、外で太陽光を浴びないからのようです。近視は眼軸長が長くなることで生じるので、治療は眼軸長を短くする事にあります。バイオレットライトという光線を取り込ませる治療法が検討されていました。この光線は紫外線の手前にある、波長360~400nmの紫色の光です。眼鏡や窓ガラスはUVカットと同様にバイオレットライトもカットされるため、取り込みづらい光線と言われています。最近では、650nmのレッドライト療法という治療が実際に行われているようです。いずれにしても、こどもの近視が多くなっていることは憂慮すべきことです。弱視や近視の疑いがあれば眼科を受診し、正確な診断をして治療を開始する時期が遅くならないように注意しましょう。