「食生活の重要性」(令和3年2月、3月号)

左川 均

 美味しく食事ができるには健康であることが大切ですが、同時に健康を維持するためには食事の内容にも気を付けなければならないことは、現代人はよく理解していることと思います。先般105歳で亡くなられた聖路加国際病院の日野原重明先生はエレベーターを使わず階段を利用されていたという話がよく知られていますが、食事についても気を配り、赤身の肉やお魚でたんぱく質を取っておられたそうです。そこで、私なりにたんぱく質、なかでも肉を取る意味を考えてみました。
 成人の身体は、水分が約60%、たんぱく質が15~20%、脂質が約15%で構成されています。半分以上を占める水分を除くと、次に多いのがたんぱく質です。たんぱく質は、体の中のあらゆる場所、筋肉、臓器、皮膚、骨、毛髪などの主要成分として存在するほか、体の機能を調整するホルモン、酵素、抗体などの材料でもあります。
 たんぱく質は多数のアミノ酸が結合してできています。アミノ酸は20種類ありますが、9種類は必須アミノ酸と呼ばれ、体内で合成することができないため、食事から摂取しなければなりません。例えばバリン。これは筋肉を作るのに大切なアミノ酸です。不足すると食欲低下を招き栄養不良の悪循環を招くことになります。ほかにもイソロイシンと呼ばれるアミノ酸があり、これは血液中のヘモグロビンを合成するのに不可欠です。不足すれば貧血にもなります。あとロイシンと呼ばれるアミノ酸では子供の成長や大人の筋肉維持に不可欠です。これらの必須アミノ酸は赤身の肉だけでなくクロマグロや卵、豆腐、プロセスチーズ等にも多く含まれます。
 また肉、特にレバーに含まれる栄養素で重要なのは、ビタミンB12です。これは野菜にはほとんど含まれておらず、肉や魚・貝類などを取らない菜食主義の方に不足しがちです。ビタミンB12が不足すると疲労、体力低下、便秘、食欲不振、体重減少、巨赤芽球性貧血を引き起こします。巨赤芽球性貧血は赤血球が通常より巨大化し成熟する前に死滅してしまう疾患です。また、ビタミンB12欠乏症により、亜急性連合性脊髄変性症という脊髄が変性する進行性の疾患になることもあります。この疾患では、ふらつきや平衡感覚がなくなるだけでなく認知症症状も見られます。ですから認知症がビタミンB12不足で起こる可能性も考えておくことが重要です。
 そのほか、肉の脂質は細胞膜の原料として重要であるだけでなく、脂溶性ビタミンの吸収率を上げるといった働きもあります。
 健康に過ごすためには、極端な食事制限をせずに身体にとり不可欠な栄養素をまんべんなく取ることが肝要です。バランスのとれた食事をいただくことこそ健康の秘訣です。