『熱中症を予防しましょう』(令和4年9月-10月号)

東成区医師会副会長 林 正則

 最近、テレビでもよく熱中症という言葉を耳にします。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもる状態をいいます。屋外だけではなく室内で何もしていない時でも発症し、場合によっては死に至ることもある怖い病気です。
 熱中症による死亡者数は、最近の環境変化に伴い年々増加する傾向にありますが、きちんと対策を行い適切な処置を行うことにより必ず予防でき、発症しても軽症で済むことができるのです。室内ではエアコンや扇風機で室温を調節し、通気をよくし、遮光カーテンで直射日光を避けたり、除湿器などで適正な湿度を保つようにしましょう。また屋外では日傘や帽子を着用し、日陰を利用したり、こまめな休憩をとるようにしましょう。温度の高い日中は不要な外出を避け、買い物や散歩の時間をずらすことも有効です。
 高齢者の方はずっと室内にいると高温に対する感覚が鈍くなり、電気代がもったいない、エアコンで冷える方がつらいなどの理由で、エアコンを使用しないことで室内での熱中症の危険性が高まる傾向にあります。節電も大事ですが、電気代よりも救急搬送されて点滴などの入院加療を受ける費用の方がかなり高くつくのは言うまでもありません。高温環境でめまい、立ち眩み、筋肉がつる、大量に汗が出るなどの症状は熱中症のはじまりです。頭痛や吐き気、倦怠感などの症状が出ればかなり危険な状態といえます。新型コロナ感染の蔓延に伴い、熱中症とコロナ感染による発熱の鑑別が困難になることもあります。熱中症について正しい知識を身につけ、体調の変化に気を付けることが重要です。
 最近の日本の気候を考えれば、熱中症は誰でも陥る危険な疾病と位置付けられます。自分は暑さに強いから大丈夫などといった過信は禁物です。熱中症を発症する前に、ご家族で熱中症予防に関してもう一度話し合ってみてはいかがでしょうか?