『食塩摂取を意識して健康寿命を延ばそう!』(令和6年4月-5月号)

東成区医師会理事 曽我部 豊志

 食塩と血圧は切っても切れない関係があり、食塩の過剰摂取は血圧を上昇させ、血管を障害して脳や心臓、腎臓などに合併症を引き起こします。日本で一番多い病気は高血圧症で、4300万人。その一番の原因が、日本人が古来からの習慣で気づかないまま続けている食塩過剰の食習慣です。高血圧症の行く末は、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血、認知症などで健康寿命を短くします。また、食塩過剰は胃がんや骨粗鬆症など日本人に多い病気の原因でもあるのです。
 味覚は幼少期に形成されるといわれ、多くの日本人は塩味のきいた家庭料理を食べ、その味を美味しいとインプットされながら育ちます。そのため大人になってからの食生活が塩分過剰であっても自覚することは難しいため、子供の頃から塩分の少ない食事に慣れるようにする「食育」が重要で、食塩摂取の過剰の気付きを促すには「食塩摂取量の見える化」が必要です。「食塩摂取量の見える化」は、随時尿のナトリウム濃度とクレアチニン濃度から1日の食塩摂取量を推定することができます。日本高血圧学会では食塩摂取量を自動計算できるWebページを作成していますのでご利用ください。自分が食べている食塩の量を知ると、高血圧症、慢性腎臓病の患者さんにおいて意識が変わるため、減塩の動機付けに役立ちます。ちなみに2024年度から開始された「健康日本21」おいて1日あたりの食塩摂取量の目標はこれまで8g未満から「20歳以上の男女7.0g未満」に引き下げられました。
 食塩の取り方を本気で考え、日常生活において減塩でおいしい!食育に取り組み、大いに健康寿命を延ばそうではありませんか!