『魚を食べて健康に過ごしましょう』(令和3年8月-9月号)

東成区医師会副会長 萩原 辰男

 我が国は周囲を海で囲まれています。魚介類を手に入れるのは容易です。アジ、サバ、イワシなどの大衆魚からタイ、ヒラメ、ブリなどの高級魚まで鮮魚売場には季節に沿った多種の魚が並べてあり、魚が大好きな私は見るだけで楽しめます。
 世界の中で日本は心筋梗塞の死亡数が癌のそれよりも少なく、ある意味特異な国です。ではなぜ、そのようなことが起こっているのでしょうか?
 魚の脂にはEPA(エイコサペンタエン酸)という脂肪酸が豊富に含まれています。このEPAが非常に良い物質で、中性脂肪を低下させ、動脈硬化を予防し、血栓を作りにくくする働きを持っています。
 日頃から魚を食する機会の多い我 が国ではEPAの摂取により動脈硬化を食生活で予防できているから心筋梗塞が多くないのだと考えるのが最も有力な意見です。実際、1990年から2001年の間日本人男女約4万1千人の調査で、魚を週に8回以上摂る人は週1回位しか摂らない人と比べて虚血性心疾患の発症が56%も抑えられたことが判っています。これってすごいことだと思いませんか?厚生労働省の調査で得られた貴重なデータです。なぜもっと国民に知らせようとしないのでしょうか。不思議でなりません。
 私は20年前から肉食を止めました。肉の加工品も一切口にしていませんが体のどこにも不調は出ていません。現在58歳ですが動脈硬化の所見は頸動脈エコーで見つかっていません。肉を食べないと蛋白質の摂取不足になって筋肉が衰えるとの説がありますが、全くのでたらめです。魚や豆類から良質の蛋白質を摂ればそれでよいことです。そのうえでウォーキング、スクワットや腕立て伏せなどの簡単な筋肉トレーニングを続けていれば筋肉量は増えるか維持できます。
 せっかく美味しい魚がこの国にはいっぱいあるのに食べないなんてもったいないです。
 動脈硬化の予防は認知症の予防にもつながります。
 もっともっと魚を頂いて皆さん健康に過ごしましょう!